こすると色が変わる!メカノクロミック発光性有機色素分子
発光性有機色素は、外部から加えられた光や電界などのエネルギーを、光エネルギーとして効率良く放出することのできる色素です。有機色素分子の多くは、溶液中では効率良く発光しても、固体状態では「濃度消光」と呼ばれる現象により発光しなくなります。最近、材料科学分野への応用を目的として、濃度消光を起こさずに固体状態でも効率良く発光する有機色素が注目を集めています。
固体状態で発光する色素の発光色が、圧迫や摩擦などの機械的刺激を加えることで可逆的に変化する現象を「メカノクロミック発光」と呼びます。メカノクロミック発光を示す有機色素は、多くの場合、機械的刺激を加えて変化した発光色を元に戻すために、加熱や有機溶媒への曝露が必要となります。
私たちの研究室では、新しいメカノクロミック発光性有機色素として、「インドリルベンゾチアジアゾール誘導体」を開発しました。本色素では、機械的刺激に応答して変化した発光色が室温下で自発的に元の色に戻ります。また、置換基R1〜R3を変更することで、発光色と発光色が元に戻るまでの時間を制御することができます1,2)。

また、多くのメカノクロミック発光性色素は、発光色の変化が二色間で起こりますが、私たちの研究室では、機械的刺激に応答して三色間でメカノクロミック発光を示す有機色素を開発することにも成功しています3)。

- Ito, S.; Yamada, T.; Taguchi, T.; Yamaguchi, Y.; Asami, M. Chem. Asian J. 2016, 11, 1963–1970.
- Ito, S.; Taguchi, T.; Yamada, T.; Ubukata, T.; Yamaguchi, Y.; Asami, M. RSC Adv. 2017, 7, 16953–16962.
- Ito, S.; Yamada, T.; Asami, M. ChemPlusChem 2016, 81, 1272–1275.